蒼山サグ『ロウきゅーぶ!』8巻感想 ところで初登場女性キャラのイラストがカラー口絵にならないあたりが特異性
- 作者: 蒼山サグ,てぃんくる
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/07/08
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個人的趣味として小学生の晴れ着はぐっとくるので、章扉絵のウェディング風ドレスの小学生たちには思わずてぃんくるさん達のおわす方向へ土下座気分。
竹中くんのもとに双子の妹を含む後輩ヒロインが大量に集まってきていて、いやだこの子放っておいたら昴くんよりラノベ主人公ぢから高まっちゃうと焦燥。
あとアニメにてシャワールームが出てきたなあと思ったら、突如原作の体育館裏にシャワールームが増築されていて爆笑しました。そんなところの設定すりあわせするんだ……。
わりといつもはあらすじを書いてて、未読の方にも記事単体で内容わかるようにしようという気持ちはあるのですが、8巻だしまあいいかと、読んでて思ったことざっと書いて終わりにします。いつもと同じことを書くだけに結局なるような気も。
- 海外赴任していた昴くんの父の帰還
昴くんより遥かに恵まれた体格を持ち実績も残しながら、大学生でバスケットボールの世界から引退した昴くんの父が登場。
日本でバスケットボールのプロ契約が解禁されたのは1997年。昴くん父の現役時には職業としてバスケットボール選手を選ぼうと思うと企業チームしか選択肢がなかったと思われる。*1就活時期には既に昴くん母との結婚を考えていたそうなので、諦めて安定した仕事を選んだというのも、まあ夢を追えるほど夢のある競技としてバスケットボールが日本国内では育っていなかったと言うことだろう。
スポコンは、そこで夢を追ってしまうある種のキチガイ*2を描くジャンルだ。野球やサッカーのような、プロ最高峰リーグがきちんと確立していて辿りつけるかはともかく目標点のはっきりしているメジャースポーツならもうすこしがんばれたのかもしれないけれど、バスケットボールはマイナースポーツで、昴くんの父はキチガイではなかった。
ヒロインの智花はそのスポコン的性格ゆえに孤立し、バスケットボールを続けられなくなった子だったことをふと思いだす。小学生の世界は、狂うことがそもそも許されないらしい。*3
この物語の始まりにおいて昴くんが、一年間の部停止という逆境でそれまでの人生を捧げてきたバスケットボールを簡単に諦めたのも、父の姿を見ていたからなのだろう。現在も団体が分裂したりプロアマ混合リーグだったり、やっぱりきれいな夢を見るのには向かない競技だ。wikipedia見たら2013年に統合リーグ設立を目指して動いてるらしいですよ。
別に国内バスケットボールに対して何かいいたいことがあるわけではないです。詳しくないし試合見たことあんまりないし。見当違いなこと言ってたら教えてください。
ただ、モラトリアムを描くのにとても強い題材であるということ。
これは、狂うことも夢見ることも抑圧されている子供達が、それでも幸せで生きられる場所を守ることについての物語だ*4。日常ものにおける時間空間と似たモラトリアムですが、いつまでも続くものではないことは最初から宣言されている*5。「狂った熱」を「見果てぬ夢」を消えてしまわないように失くさないように抱えたまま大人になっていく為の場。場ではなく道なのかも。この猶予期間は子供達にとっての猶予ではなく、スターの到来を世界が猶予されてるのかもしれないよ!
僕は、そんな風にこの本を読んでいます。
先行作品として『放課後ウインド・オーケストラ』をいつも挙げてます。『AKB49 恋愛禁止条例』もついでにどうぞ。
- 作者: 宇佐悠一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/07/04
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- 作者: 宮島礼吏,元麻布ファクトリー
- 出版社/メーカー: 講談社
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- 新登場のキャラも合わせて5年生5人が登場
ミニバスケットボールは試合出場の為に10人必要という話を既刊でやっていて、劇中時間は9月、ミニバスケットボール連盟のサイト調べたら関東ブロック大会は12月で全国大会は3月なのでまだ公式戦に出場できる機会は残ってる。部活ものとしてはその中心を場に据えるか人に据えるかという選択があって、場に据えるなら必ずしも公式戦に出る話をやる必要はないのだけど、どんな話になるにせよ大好きなシリーズ、次の巻も楽しみに待ってよう。
- アニメ化
7月からアニメも始まっていて現在2話まで放送されてますね。体の動きがちゃんと描かれてるのがすっげー嬉しい。運動音痴なので身体感覚について言えることは全然ないのですが、一応小学生の時にミニバスケットボールやってたので他のスポーツよりは多少わかって楽しく見ています。
声優さんの実写映像は身体性の輸入のためのギミック! とか放送前に与太言ってみてましたが本編には全くつかわれないねーははは
- アーティスト: RO-KYU-BU!,KOTOKO,桃井はるこ,八木沼悟志,渡辺剛
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
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- コミカライズ
- 作者: 蒼山サグ,たかみ裕紀
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
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たかみ裕紀さんによるコミカライズで初めて昴くんの顔みましたけど、わりと冷めた目をしてるのがきゅんとくる。たかみさんグッジョブ、ってアニメの絵設定が先行してたのかな。あるいは公表してないだけでてぃんくるさんが設定はあげてたのだろうか。
以上。また来週!
*1:世の中の大概の事はそれで食べていこうと思うとインストラクターになるのが一番手っ取り早かったりしますがとりあえず置いておく
*3:テニスだったら松岡修造になれたのかもしれないけれどhttp://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20110625/p1、バスケットはひとりでやるものではなかったし智花は小学生だ。ちなみに、チームもので周囲がドン引きするような熱を継続しその熱を感染させる人物の事を僕は「狂ったロールモデル」と呼んでる。まれによくいる。そのまま真似すると凡人は人生積むがまったく影響受けないのも人生舐めてるし、出会ったが最後の妖怪みたいなものか。
*4:他の子たちにもそれぞれを中心にした物語はあるが、今は智花と昴くんの関係を中心にして話す
*5:いやもちろん日常ものだって終わりは大概自明に存在するけど