そこなしハッピーエンド4

本の話とかアイドルの話とか。

蒼山サグ『ロウきゅーぶ!』その3 女子小学生のモラトリアムを守る高校生。

今日も飽きずに『ロウきゅーぶ!』のことを書く。
半年ぐらいはおすすめ!と叫び続けようと思います。

主人公の事しか言っていないので、ヒロイン達についても何か書く。

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)


読んでて思ったのが、というかラノベ全般を読んでいて常々思っている事ですけれど。

日常を舞台とした、ライトノベルにおける少年少女達の悩みは、その殆どが時間の経過によって解決されうる問題です。いわゆる「大人から見れば、何でそんな事で悩んでいるんだといわれてしまう内容」ですね。だからといって本人達にしてみれば深刻な悩みである、という事には変わりないのですけれど。『ロウきゅーぶ!』では、対象が小学生であるため、より顕著にどうでもよいことで悩んでいるように見えますが、高校生だったところで殆ど差はありません。


ロウきゅーぶ!』のヒロインの一人、湊智花。彼女はかつて所属していたバスケ部で、誰よりも真剣に打ち込んでいたが故に周囲の顰蹙を買い、居場所を失った子です。そして逃げ出し、現在所属する私立小学校に転校してきました。仕方ない事だったのでしょう。小学生のころから本気で何かに打ち込んでいる人間は少ないですし、ひとつの分野にそういう人間が集まる事も、さらに少ない。小学生の頃って、むきになっている人間を馬鹿にする空気がありますしね。まあはてブとか見ていると大人もそうみたいですれど。
彼女が抱えている問題を解決する方法は簡単です。バスケットボールを続ければ良い。低いレベルの人間に合わせて生きていく必要なんてこれっぽっちもありません。小学校では無理だったとしても、バスケットボールに力を入れている中学、あるいは高校を選べば、自分と同じレベルの能力と信念を持った人間といくらでも出会えます。

もう一人。

香椎愛莉。彼女は自分が、飛びぬけて高い身長であることに強いコンプレックスを持っています。異形が排斥されるのは常ですし、小学生のころって男子は女子をからかいますよね。気の弱い彼女とっては、その事は深刻なストレスだったのでしょう。
彼女が抱えている問題を解決する方法は簡単です。バスケットボールを続ければ良い。バスケットボールでは結果的に淘汰されて身長が高い子が残っていきますし、その内埋没する事が出来ます。

まあ、別にバスケにこじつける必要はないですが。




主人公は彼女達に、問題を乗り越えることを強要しません。彼はただ、守る手助けをするだけです。彼女たちが楽しくバスケットボールを出来る場所を。


何となく「モラトリアムの肯定」というテーマが読めるような気がしてきました。というか僕が読みたがっているのが解ってきました。現在ジャンプスクエアで連載されている『放課後ウインドオーケストラ』を連想します。部活を題材にした物語から読み取りやすいテーマなのかもしれません。

放課後ウインド・オーケストラ 1 (ジャンプコミックス)

放課後ウインド・オーケストラ 1 (ジャンプコミックス)

しかしただモラトリアムを肯定するだけの話を書いてしまうと、大人に鼻で笑われちゃうような作品にしかならないでしょう。ヒロイン達が小学生だから説得力があるともいえますけれど、そんな弱い構造の物語だとは僕は思っていません。フィクションの登場人物の年齢は全部何かの比喩だと思って読んでいますし、現実的なリアリティは関係ないと思います。

ではいったい何故『ロウきゅーぶ!』から説得力を感じるのか。明日まで考えます。明日も書くのかよ。