ぼくを語ってくれるひと/せかいはきみのもの
田舎は小さな学校でひとりぼっちだったけど
東京に来たら
大きな多きな学校の中で
ホンモノのひとりぼっちになってしまった――でもともだちなんて一回も持った事がなかったから
ボクにはそれが普通だった「普通だ」
――と思おうとした
p147
ひ……ひとりぼっちになるのこわいよう……
ほんとはずっと恐かった
でもっっ でもっっ
後悔なんてしないっっ しちゃダメだっ
だって 私のした事は
ぜったい まちがってなんか ない!
p170
――そうか
ナワシログミっていう名前だったんだ……そして
2ツ星テントウってずっと呼んでたこれは
ナミテントウって名だったんだ……
p177
- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: コミック
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(略)
放課後、街角のドラッグストアでたむろする子どもの集団のことを書いたお話はいくつかありました。でも、コカコーラを売っていくらもうけても、ハーシーのチョコレートバーを万引きされたのではその儲けがゼロになるといって、子どもの下校時の午後三時十五分から四時までは店を閉めてしまう店主のことを書いたお話はどこにいけばあったでしょう。その店主がどうしても正常な人には見えなかったのはどうしてでしょう。店主は気難しいが、愛すべき人だった。私の時代の物語はみんなそうなっていました。
(中略)
私は自分の子どものためにそうした人物を自分の本に登場させました。言い逃れのためです。なぜなら、私は愚かなまでに言葉の力を信じていますから。なぜなら、私は事が起こるのを見せたいから。なぜなら、なんとも説明しがたい、先祖返りとも言える芸術上の理由から、私は書くことでそれが当たり前のことになると信じているからです。
E・L・カニグズバーグ『トーク・トーク』「ニューベリー賞受賞講演」よりトーク・トーク カニグズバーグ講演集 (カニグズバーグ作品集 別巻)
- 作者: E.L.カニグズバーグ,E.L. Konigsburg,清水真砂子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/09/27
- メディア: 単行本
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- 零くんは「普通」だと思い込もうとした自分の学校生活を、それが寂しいものとして「当たり前に」存在したことを物語ってくれるひなちゃんと出会った。思い出のなかの、木と虫の名を図鑑という誰かに物語られたものによって確認するのは、自分が実際に触ったことがあるという経験と、それが実在するということのあいだを埋める行為だ。目で見たこと感じたこと。そういったことを「現実」へと変換するために、物語は物語られ、僕たちは読書をする。
- いつだって「どうして?」と疑問だらけの子どもは、他人に物語られて初めて、幸せも不幸も善も悪も「当たり前に」存在することを飲み込む。そうならずに自分語りをはじめてしまった子どもの行く先は、みんな知ってるでしょう?
- 西尾維新『猫物語(白)』において、図書館の本を全て読みきっている少女、羽川翼は、語られる対象であるヒロインは、ついに図書館の中からは自らの生み出した虎の物語を見つけられず自分語りをはじめる。ライトノベルの登場人物に親の影が見えない理由? ネグレクトされているからだ。そんなこと、子どもはみんな知っている。知ってはいてもそれは「当たり前」の事として受け止められない。だって、家族制度というものをそれなりに信じているから。そこからはみでたものが物語られない環境で生きてきたのだから。ライトノベルは全ての児童虐待被害者と加害者のための文芸という側面もあるんじゃないかな。
物語シリーズ後半戦、語るものであったアララギくんを語られる主体とするのでしょうか。続きがでないとわからない。
- よごともまがごとも語られなければならない。きゃっきゃうふふな青春も、陰惨な青春も、同様にうらやましくない青春時代として。
- 作者: 安達哲
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 本屋の子供向け売り場は、ギフトショップとしての役割が強いと、さっき引用したカニグズバーグの本に書いてありましたが、うん、物語は「ギフト」だ。あなたにはどの本を子どもに買い与えるか選ぶことができる。
- そういえば先日、齋藤智裕『KAGEROU』を読みました。twitterから感想転載。ヤングアダルト層向けの本としては「届く」本だったと思うので、あんまり楽しめなかった大人の方々は、リボンを巻いて親戚の子どもにでもあげればいいんじゃないかな。クリスマス近いし。水嶋ヒロだし。実家帰省した時、中学生高校生の服装眺めてたら、みんな水嶋ヒロのコスプレみたいだったよ。
自分が対象読者層でないことを理由に文句言うのは結構間違ってるよね。
齋藤智裕『KAGEROU』よみおわった。おもしろかった! ノンブルとか修正シールとかの遊びは、読書人は初読で気づくからフックにならないだろうけど、普段読書をしない人には文章に直接的に書かれないことを自分から受け取る「読書の快楽」を初体験する一冊になるしかけだと思う。よい本。
@A_kiyama about 15 hours ago読み終わった子たちが共感の感想で終わらずに「これってこういう意味だよね?」という会話を交わしやすくなる仕掛け、気付いた人が興奮するしかけを用意してるのは、ベストセラーになって中学校や高校でまわし読みされるであろう本としてとても素敵だと思う。
@A_kiyama about 14 hours agoまあギミックをもっとSF寄りにすることもミステリ的な面白さを増すこともできるじゃろというのはそうなんだけど、この本のフラットさはちゃんともっと物語に触れたいという気持ちを喚起された子にとっては翼になると思うよ。
@A_kiyama about 14 hours ago以上、「最初から褒めるつもりしかない偏りまくったカスタマー(水嶋ヒロファン)」による感想終わり。さーあとは今年の非角川系新人の中で一番好きな裕時悠示さんの新刊『踊る星降るレネシクル』3巻を読んで寝よう。
@A_kiyama about 14 hours ago
- 作者: 齋藤智裕
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/12/15
- メディア: 単行本
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