そこなしハッピーエンド4

本の話とかアイドルの話とか。

『school days』感想総括 刹那を通じて読む

School Days 第1巻 通常版 [DVD]

School Days 第1巻 通常版 [DVD]

school days』アニメ版は、主人公の誠が感情移入の対象とならないように造られている上に彼が死んで失われるものがあまりにも少ないので*1、だからこそ視聴者が安心して「誠死ね」と言えたし*2あの最終回をエンタメとして消費できたのだと思います。

で、このアニメがそれだけのアニメかというとそんなことはなく。
視聴者が感情移入の糸口をつかみやすい、かなり格の高い登場人物として清浦刹那がいて*3、彼女を追うことでこの物語をより豊かに楽しむことが出来ます。

刹那はメインヒロインの一人である西園寺世界の幼馴染です。彼女は世界と誠の恋愛をうまくいかせるために、はた目にはかなり強引でおかしく見える行動をとります。その行動が、もう一人のメインヒロインである桂言葉を追い詰め、物語をあの結末へと至らせます。

序盤の刹那を見ていて、彼女にすんなりと感情移入できる人はあんまりいないでしょう。しかし、ときおり挿まれる回想シーン、その殆どが刹那の内面を掘り下げる為に効いてくることにより、彼女の行動は彼女にとっては無理のない、ごく自然な行動であることが見えてきます。*4

序盤では世界に従属するキャラクターかと思えてしまう刹那が、物語後半になって実は世界という人間の弱さ脆さ酷さを理解しきった上で、それを完全に許し、また庇護対象としてみている*5ことが読めてくる。すると刹那の行動が、見えない選択肢を作り手が恣意的に選んだ結果ではなく彼女にとって必然であったことが解ってきて・・・。

そのあたりまでくると刹那だけではなく、このアニメの登場人物達が記号の組み合わせ的な面を超えて積み上げられた過去の結果として存在してくる人格であることが解ってきて、もう笑ってnice boat.と言ってる場合じゃなくなってきます。キャー



school days』の登場人物たちは全員まともでない性格の持ち主ばかりです。しかし彼らはかなりの天然で、自分の欲望に従っていたとしても悪意をもって動いていた子はいませんでした。

死ぬほど悪いことをした人なんていなかったにも関わらずあの結末にたどり着いた。劇中で誠も言っていますが、「なぜこんなことになってしまったのか」、そのことを考えながら見ると、またおもしろく見る事が出来ると思います。そういう読みに耐えるだけの作品であると僕は思いました。


最後に紹介。いやこんな人の来ないブログより、既にたくさんの人が見てると思うけど。

電視の部屋
電視の部屋

school days』の視聴を勧めてくれた、ルイさん、LDさんによるチャットのログ。とても面白かったです。

*1:しかも誠自体の救済は既に終わっている

*2:いや、僕は言ってないけど

*3:上のDVDのパケ絵のとおり

*4:実例をいっぱいあげるべきだと思いますがそのうちやります。

*5:何故この二人の関係性が生まれたか、がこのアニメで語りきられてない唯一の事かもしれない。