そこなしハッピーエンド4

本の話とかアイドルの話とか。

山形石雄『六花の勇者』担当:佐藤すみれ

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)


 ミステリ、SF、ファンタジー等のいわゆるジャンル小説読者から評価が高かった山形石雄がデビュー作「戦う司書」シリーズを全10巻で完結させた後、新たに始めた長編シリーズ。そのファン層にまさにドンピシャであるところのファンタジー世界を舞台にしたミステリです。作家やライター、及び読者へのアンケートで毎年ランキングが発表される『このライトノベルがすごい!』2013年度版では、集英社から発行されているライトノベルとしては最高順位の3位にランクインした人気作。
 数百年ぶりに復活しようとしている魔神を封印するために勇者が集まる。伝承では六花の勇者と呼ばれ6人のはずなのに、勇者の証である六花の紋章を体に持つ者は7人いた。いったい偽者は誰なのか、というシンプルなフーダニットを軸にした小説。作者特有の緻密な構成と緊張感は今作も維持されています。「偽者は誰か?」という謎は1巻で一応すっきりと決着しますが、直後別の謎が立ち上がり2巻へと続いていくので続刊も読みましょう。現在3巻まで刊行中。
 佐藤すみれさんは、AKBでは屈指の読書家で知られており朝日小学生新聞にブックレビューの連載を持っていたこともあります。紹介していた本の傾向がYAに寄っていたり、瀬尾まいこ重松清を好きな作家に上げていたりとナツイチがまさに対象読者層として想定するような「ジャンル小説読者でない小説読者」である彼女が、今回のラインナップの中で際立ってジャンル小説的である本作を担当するのはなんだか面白いですね。1巻を楽しんで続きも読んでいってくれたら嬉しいな。