そこなしハッピーエンド4

本の話とかアイドルの話とか。

『昴』曽田正人 クラッシックについてピアノ教師に聞いてみた

今まで、ダンスで友達なんていなかったの。
こんなふうに、みんなと踊って。観てる人も、いっしょに楽しもうって応援してくれて…
楽しかった。振付けなんて、何もなくて…みんなその場のノリでダンスが出来てって…
バレエにはこんな自由はない。全然違う。
手が1cmずれたとか、足の甲がのびてないとか。もう、気がヘンになりそうなことがしょっちゅうあるよ。
でも、ほんとうにギリギリの、針の穴を通すような踊りができたとき、背筋がふるえるような感じがするの……!!
一年に一回、あるかないかだけど、そういうとき、たぶん、電流がテレパシーみたいに、あたしの身体からどばーって出てると思う。

バレエはほとんど楽しくない。でも、楽しいとか楽しくないのむこう……
1cmとか1mmの、逃げ出したくなるような針の穴のむこうに、
何かがあるの。
死んじゃうくらい気持ちいいことが…………!!

昴 (3) (ビッグコミックス)

昴 (3) (ビッグコミックス)

『昴』が面白かったので、ピアノ教師(母)にもおすすめして読んでもらった時に聞いた話。


クラッシックというジャンルはほぼ完成されており、正しい表現が大体決まっている。
まず、自分の中に表現のイメージがない間は何をやっても先生に「違う」と言われるので、まったく楽しくない。
それでもずっと続けていると、自分の中にイメージができて来る。しかしそのイメージへ自分を近づける方法がわからないのでやっぱり楽しくない。
しかしふとそれを超える瞬間があり、その瞬間は私天才じゃなかろうか!という状態になる。
しかし同時に自分のイメージもさらに高いものに更新されるのでふたたびどん底に落ちる。
これを小学校〜中学校の9年間もつづければ、大概の子供は自分のイメージのまだ先にある世界に気づくことが出来る。
私の母は基本的にプロのプレイヤーまで育てることを目的としていない*1ので、”それ*2”に気づかせる所までが教育目標らしい。

最初にも書いたが、クラッシックはほぼ完成されたジャンルであり正しい表現が大体決まっており、そこへと至る道が近道のない一本道であるが故に、どんな天才のいる場所であっても”そこにある”という事自体は現実的に実感することが出来る。それを知ることは、子供の人生のその後の選択に大きな影響を与える。と母は信じている。

しかし、私の母のピアノ教室は音大受験を目指す子供が入るようなピアノ教室ではなく、情操教育、”習いごと”的なピアノ教室であり、生徒の親は音楽経験者でない場合が殆どの為、このようなことを言っても*3ほぼ理解してもらえないので、小学校高学年以降の塾等の優先順位が親にとって高くなるころに、そこまでいかずに辞めてしまう子が割と多いのだそうだ。
そのあたりは割りとジレンマで、それまでの経験が無駄にならないようにつぶしのきく演奏技術*4も平行して教えるようにしているらしい。

他聞いたこと。

・情操教育として子供に楽器を習わせる予定のある方は、どんなに親から見て成長がないように見えても中学校卒業までは続けさせてあげてほしい。それだけの期間があれば、殆どの子供に一生残るものを体得させることが可能。

・(プロを目指す人を除いて)技術を磨くだけなら子供のころにやるよりも大人になってからのほうが頭を使える分効率が良い。しかし大人は楽しくないとやめるのに対し、子供は”楽しくなくても続けることが出来る才能”をもっているので、子供のうちがよい。


ホールを借りてピアノ発表会を開催する理由
・ホールという空間は、段ボールを叩いても良い音がなるので、普段の2割増しぐらいうまく弾ける。(弾けた気分になる)
・良い楽器で演奏する機会が得られる。良い楽器はより表現がつけやすいので、普段よりも自分のイメージに近い演奏が出来る。
・演奏を完成させるまでの期限を定めることにより子供を追い込める。
・人前で演奏する機会を定期的に設けることにより、子供が自己満足に陥らないようにする。
要は子供の成長の為。
・家族が子供の成長を感じて喜ぶ。
成長が見えないものを続けさせてくれる親御さんはいない。

・コストを考えると、クラッシックやるならピアノが一番*5
・某音楽教室のカリキュラム(ドレミファソーラファミッレッドー♪)*6は、先生の弾いた音を絶対音階で歌わせることによって耳を鍛える(絶対音感を身につけさせる)ことを目的としている*7が、正直音楽をやるのに絶対音感は必要ない。それよりも、楽譜という只の記号の羅列から記号以外のものを読み取る能力をつけさせることのほうが、大人になってから楽しく音楽を続けてくれる子供を育てるためには重要。



しかし、本当に母の言っていたことを正確に拾えているのかは不安。誤解釈があるやも。
以上、終了。

*1:そこまで育てる能力を自分が持っていると思っていないので、音大受験を指向する子供にはそれ相応の教室を紹介している。

*2:それって何だ

*3:わざわざ言うことはないそうだが

*4:母はまだ世の中にカラオケが普及する前、結婚式会場でリクエストされた曲の伴奏をする仕事をしていたので、即興でそれらしく弾く、絡んでくる酔っ払いと普通に会話しながら演奏を続ける等のクラッシックやるのに必要ない技能を持っている

*5:家の練習用は5万〜の電子ピアノで十分実用に耐える。アップライトピアノやグランドピアノの購入は子供のやる気と経済状況考えて。

*6:この曲自体は音楽の基本が簡潔にまとめられた秀逸な練習曲だとも言っていた

*7:また、他の音楽教室だと、音符に全て別の色をつけて、音と色の記憶を結びつけることによって絶対音感を習得させようとする